スカートで行く、インド

北海道情報と毎日のアウトプットブログ

フランス到着・大の大人が大泣きするの巻

あとはタクシーに揺られて40分ほどでパリ郊外にある夫の実家にたどり着くのみ。
のはずが、夫がタブレットの電源を入れて嬉しそうに声をあげる。
「お兄さんが彼女と一緒に車で空港に迎えに来てくれてる!」
すごく最低なことをこれから言う。
私はこの時から嫌な予感がしていた。
ここはフランス。そしてこれから3週間はフランス人に囲まれる。フランスと言えばフランス人といえばイレギュラー。日本のレギュラーと違うかからイレギュラーなのではなく、ハプニングが起こって当然だぜ!の意味のイレギュラー。
この時の私は日本の自宅にて起床してから丸24時間経過しているが初めての子連れフライトの緊張でうたた寝すらほとんどしておらず完徹に近い。その時の自分にイレギュラーも異文化交流の味わいの一つと受け止める度量も気力もない。
ここは予定通り(金で解決できる)プロ(タクシー)に頼もうゼ!とは言えるわけもなく(もう義兄は空港についているいるみたいだし)「そうなんだ、チャイルドシート必要だけど大丈夫かな?」と尋ねると、夫はすかさず「リサイクルショップで買ったって書いてあります」と答える。
この時はさすがに私もありがたいし申し訳ないな、という気持ちに変わり入国ゲートをくぐる。私達家族と義兄・彼女は再会を喜ぶ。そして空港の地下駐車場へ。
義兄らはトランクを開ける。トランクからはチャイルドシートが出てきた。ヨダレとミルクの白いシミがあちらこちらについているチャイルドシート
それを今から着けるとのこと。
私は眠りこけている13kgの息子を抱えて立ちながら一時間以上、夫と義兄がチャイルドシートを装着するのを待つ…
ごめん、ありがたく思わなきゃいけないのかもしれない。が、傲慢と言われても構わない。タクシーなら今頃家にとうに着いている、早く寝たい。
この時から私は人でなしモードに切り替わっていた。
21時半に空港に到着し、夫の実家に着いたのは23時過ぎ。
夫の実家に入ると大音量で音楽がかかっている。無印のBGM系のケルト音楽。
半年ぶりの再会、夫がフランスの地を踏むのは約3年ぶり。
義母が嬉しくて大音量で音楽をかけて歓迎したい気持ちはわかる。
というか、フランス人はわりかし日本の一般家庭より音量を大きめで音楽をかけるのはわかっていた。
寝ていた息子は大音量で起きる。
が、これも想定内。
フランス人は子供に配慮ってのもまずしない。
親戚と、友人とパーティをしていて24時を過ぎ子供が寝る時間でも音量を下げない様子は今まで何度もみてきた。
さすがに義実家なので明日からこんな音量は止めてもらおうと思ったけど今夜は仕方ない、今夜の主役は夫と義家族なのだから…とざわつく自分の心を抑えた。今ならあの時の自分が間違っていると気づく。ただ「疲れているので音楽の音を下げてください」こう言えば良かった。
が、この時は寝不足が変な方向に作用し『今の自分は寝不足という普通じゃない状態だから、わがままになっているのかもれない』という思考回路になっていたのだ。
シャンパンが用意されていたので乾杯して飲みきった後は「寝不足だから私はもう寝るね」と皆んなに言い、夫と息子三人で寝室のある2階に上がる。
寝るのは私だけ。夫は皆とこれから語らうつもりで、私が起きているうちにパッチリ目が開いてハイテンションモードに突入した息子と共にシャワーを浴びようとしていた。
裸になってシャワーブースのガラス戸をくぐる夫と息子。バスタオルを持ってシャワーを終える息子を待機する私。次は私がシャワーを浴びて泥のように寝よう、今は変なテンションの息子もシャワーを浴びれば眠りたくなるかもしれない…そんな期待をしながら待つこと数分、「お湯出ないです」と夫。
義母を呼んで説明すると「そうだ、さっきお湯使ったからしばらく出ないわ」との答え。
フランスだけじゃなくてイギリスやオーストラリアもそうだったのだけど、こちらはお湯はタンク式なのでそういうことがある。
が、言わせて。
お湯が出ない等詳細まで想定できなかったけど到着した日だけはストレスなく休みたかったから、フランス到着日は空港周辺のホテルに泊まらないかと私は提案していたが、タクシーで40分ほど行けば実家あるのにもったいないと断った夫。
汗だくで到着してあとはシャワーに入って眠るだけ、というところでおあずけ状態の自分の体からドス黒いトゲが生えてくるのがわかる。
が、出ないものは出ない。お湯は出ない。
裸の息子にパジャマを着せた。
夫は済まなさそうにしている。
私は「もういいよ。皆と食事しておいでよ」と言い放ち夫を解放する。
にこやかにそう言える自分はもちろん居ない。無表情で「覚えてなよ」という脅しのひとつも付け加える。
息子はこの雰囲気を感じたのか「僕も寝よう。ママ、一緒に寝よう」とおとなしくなる。
寝室へ行き、ベッドに入る。
階下から響いてくる重低音と笑い声。
口が達者になってきた息子は「静かにー!◯◯君(最近なぜか自分の名前に君付け)寝てるよー!」とベッドの上から大声で文句を言う。時間も時間だしもうすぐ止むだろうと息子を諌めるも数十分経っても止まない音。殺意を覚えてきたので階下にいって止めてもらうよう言ってこようとベッドを下りた時にちょうど夫が寝室に入ってきて私にたずねる。
「音うるさくないですか?」
この時、頭が真っ白になった。
脳はもう働かない、口だけが動くとはまさにあの時だった。
「離婚して。」
順番は覚えてないが、
うるさいに決まっているだろう言われなきゃ分かんない?ロングフライトを終えた人間が来て(実家に泊まるよう言ったのは義母と夫)日付も変わった時間にこれだけうるさくするあなたの家族はおかしいんじゃなの、いやもうでもいいどうでもいいからもう離婚して私を解放しろぉーーー
とぶちまけた記憶はある。
諌めようと口を挟む夫に「いいから黙って聞け。離婚しよう。私は離婚をする、決めた。」と言った記憶もある。翻訳本のような口調になって感情がなくなった。私は床にへたり込んで大泣きした、馬鹿である。
夫は「寝不足でおかしくなっているんだよ。でもいろいろごめんね、音楽は小さくさせる。今は寝ることだけ考えて」と言って階下にいった。
息子にはひどいものを見せた、親失格である。
確かに音楽の音量が下がったものの、相変わらず聞こえてくるし話し声もうるさい。
夫はこの後、私と息子の様子を見に顔をのぞかせてくるがその度に「もう愛はないから」と言い続ける私。
息子が「うるさいね、もう ◯◯君お家に帰りたい」と言っても諌めようともせず「ほんとだよ、ママも家帰りたいわ」と同調しながら眠りに入りダメ人間なまま一日が終わった。
こうして文字にすると、当日は周りにせいにしたけど私の中途半端な言動と思考回路にも腹が立ってくる。でもそれは今だからで、あの時はそうするしかなかったのは間違いない。書いて読み直してだんだん悲しい気持ちになってきたな。